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天にむかって歌う 六
作者:赵平 发表时间:2013-09-03 浏览:2772

作品录音 (请点击):赵平教授文集

 

 翌日、どうにかして[1]、黄隊長に感謝の気持ちを示したいとあれこれ考えていた。夕食前になって、僕は新しいノートをやっと探しだし、黄隊長の家を訪ねた。僕らは、貧農・下層中農の再教育を受けるために来たとはいいながら、この村に来るなり[2]、村はずれのガランとした倉庫に泊まり込み、仕事はといえば、どうやら黄隊長がいい加減(かげん)にいいつけたもののようで、村人とは関係のないことばかりやっていた。だから村人とは全くと言っていいほどつき合いはなく、黄隊長の家が村のどの辺りにあるかさえ知らなかった。何軒か尋ねて、ようやく見つけることができた。彼の家の玄関は開けっ放しだった。母屋(おもや)(のぞ)いてみると、部屋の中はデコボコでひびだらけ[3]食卓(しょくたく)と、両側の長椅子(ながいす)だけで、家具らしい[4]ものは何一つなかった。黄隊長は長椅子に座り、蒸気(じょうき)をたてているトウモロコシの粉の蒸籠(せいろう)に向かって、ボーとしていた。どうやら食事を待っているらしい。

 僕は敷居(しきい)をまたいで母屋に入った。入るとそこは土間だった。土の表面は湿気を含んでじとじとしていた。部屋の中もむっとした湿気がこもり、濡れた蜘蛛の巣が顔に(まと)いつくように感じた。

 「ごめんください、突然お邪魔してすみません…。」

 「いやいや、遠慮しないでこっちへ入ってくれ。」黄隊長は部屋の奥の長椅子を指さして言った。

 「ちょうどよかった。これから食事なんだ、きっと腹が減ってるだろう。一緒に食事をしよう。」

 僕は、もう食事は済ませましたと言おうとしたが、口ごもってしまい、言葉にならなかった。

 ぽっちゃりした少女が台所(だいどころ)から(なべ)を持ってきた。ジャガイモのスープだった。白いスープの上にみじん切りにしたネギがきれいに散らしてあった。それだけなのに、僕にはとても美味しそうに見えた。僕は思わずゴクリとツバを飲み込んだ。

 少女は鍋をそのままテーブルに置いてから、台所へ戻って茶碗を二つ持ってきて、蒸籠の蒸しトウモロコシの粉を山盛(やまも)りによそった。一つは僕の前に置いて、もう一つは黄隊長の前に置いた。そして、僕の顔を見ようともせずに振り返って「黒子(クロ)」と呼んだ。

 外から黒い猫が一匹飛び込んでこなければ、彼女が呼んだのは、てっきり僕だと思っただろう。僕の下唇の横には黒子(ほくろ)が一つあり、一時期、母にそれを呼び名にされたことがあった。

 少女はシャモジで蒸しトウモロコシの粉をすくい、玄関の横に置いてある皿に入れた。黒猫は皿に近づき、そのにおいを嗅いだ。それから美味しそうに喰いはじめた。

 僕にはその光景がとても興味深かった。以前猫を飼っていたことがあるが、その猫は、餌に魚の粉末を混ぜなければ、見向き[5]もしなかった。ある日、近所の家にネズミが出るというので、僕の猫を借りに来た。僕はうっかり餌のやり方を言い忘れ、数日後、猫が帰ってきた時には、やせ細って骨と皮になっていた。床に置くとフラフラして、窓からの風でその場にコトンと倒れてしまった。隣の人は白い飯と野菜の(しる)を与えてくれたらしいが、どうやら僕の猫は、たとえ飢え死にしても、信念(しんねん)は曲げないと意を決したようで、家に帰ってくるまで、米を一粒も口にしなかったらしい。加えてネズミを捕るという先祖(せんぞ)から伝えられた本能もまったく消えうせ、結局、可愛そうに何日もずっと絶食(ぜっしょく)状態だったのである。

 トウモロコシを喰える猫なんて、いままで、見たことも聞いたこともなかった。ところが、後で分かったことだが、その猫は、鼠はもちろん[6]雀やバッタ、時にはゴキブリまで捕まえていた。生きているものであれば、何でも口にするという、たくましさがあった。動物の本能的なエネルギーが、この猫の小さな体に()(あふ)れていた。たんぼの中を走り回っている猫を見かけるたびに、軍代表が僕らを田舎に送った意味が、自分なり[7]に分るような気がした。いや、軍代表の思惑(おもわく)よりずっと深く理解していたのかも知れない。

 十数年の後、僕は日本に留学した。ゴキブリを前にブルブル(ふる)え、悲鳴を上げたり、逃げまどったりする子供たち。時には大の大人までもがそうだった。そのような姿を目にするとき、僕はかつてのこの黒い猫を思い出し、朝から晩までトウモロコシの粉しか口にすることのなかった日々を、懐かしく思い出した。それと同時に、マグロの大トロを平気で平らげ、(いた)みかけた野菜の固い(くき)も、美味しく感じる自分を誇らしく思った。

 少女は僕に箸を渡してくれた。僕は彼女に気を(つか)って愛想(あいそ)(わら)[8]をした。黄隊長は立ち上がり、(はり)にぶら下がった豚肉の薫製(くんせい)を押さえ、ナイフで脂身(あぶらみ)一塊(ひとかたまり)切りとって少女に渡しながら、僕の方にちょっと口を突き出した。少女はその()(さと)ったのかニッコリと笑い、脂身を持って台所に入って行った。しばらくして、少女は、炒めた脂身(あぶらみ)を皿に載せて持ってきた。それを僕の前に置くと、黄隊長の横に座って、蒸しトウモロコシを食べはじめた。

 「さあ、食べてくれ。」

 黄隊長は脂身を入れた皿を箸で指しながら言った。僕は箸を取り、少女の方へ目をやった。

 「うちの娘だ。十五歳で一人っ子。」黄隊長は言った。

 「…。」

 「女房は去年の春に亡くなったんだ。らい病だったんだ。」

 僕は何と答えていいのか分からず、脂身を一切れ取って口に入れた。塩を()めているような塩辛さだったが、久しぶりに舌の根に脂っこいうま味を感じ、激しい空腹感に襲われた。お腹がグウッと鳴った。

 「美味しいかい。去年女房が作って、残してくれたんだ。来年の春節まではもつだろう。皿にあるのは全部君のおかずだ。都会からの大切なお客さんだ。それなり[9]にもてなしをしなくちゃな。」

 僕はふと思いついた。持ってきたノートをこの子にあげよう。僕は、蒸しトウモロコシを急いで()き込んだ。それからジャガイモのスープを飲んで、脂身の皿を少女の前に押しやって、「ご馳走さまでした。ありがとうございました。」と礼を言った。

 そして、ポケットからノートを取り出し、少女の前に置いて、「これ、受け取ってください。」と言った。

 少女はそれにチラリと目をやり、また何も言わずに下を向いて食べ続け、僕はちょっとバツが悪い思いをした。少女は皿を父親の方に出して、

 「もう要らない。お腹いっぱい。」と言った。

 それからおっとりした手つきでノートを大事そうに手に取り、僕に向かって言った。

 「ちょっと私の部屋に来て。見て欲しい[10]ものがあるの。」

 僕は黄隊長の方を見た。黄隊長は軽く(うなず)いた。僕は少女の後について部屋に入った。

 少女の部屋はベッド一つだけ、ほかには何もなかった。ベッドには蚊帳(かや)がぶら下がっていた。新しい時は白かっただろうが今は、灰色(はいいろ)薄汚(うすよご)れていた。おそらく掛けてから一度も洗ったことがないのだろう。

 少女はベッドの下から木の箱を引き出すと、(ふた)を開けて、苗族の服とスカートを一(ちゃく)取り出した。

 「これを見て。私が刺繍(ししゅう)したものよ。綺麗でしょう。」彼女は言った。

 服には風の中に揺れる草花や遊んでいる子供、空を飛んでいる龍などがびっしりと刺繍してあった。龍の形は漢民族のそれとは違って、全くといっていいほど[11]威厳(いげん)がなかった。龍というよりムカデといったほうがいい[12]かもしれない。

 「とても綺麗だね!」僕は大げさに感心してほめた。

 「これは、何のために刺繍したの。」

 「苗族の女の子は物心(ものごころ)がつく[13]と刺繍を習い始めて、お嫁へ行くまでに、覚えなければならないの。」

 「僕は、この刺繍を売ってお金にするのかどうか、聞いたんだよ。」

 「売ったりしないわ。『四月八日』の歌垣(うたがき)のとき、とか、お嫁に行くときに、自分で着るのよ。」

 「君はまだほんの子供じゃない。今からお嫁に行くときのことなど考えるのは、早すぎるんじゃない。」

 「早すぎるってことはないわ。隣村の万菊は、十六歳でお嫁に行ったのよ。お婿(むこ)さんは四歳年上の二十歳だったけど。」

 「あっ、名前をまだ聞いていなかった。」

 「茶花(ちゃか)っていうの。」彼女は突然ケラケラと笑い出した。

 「父は私のことを、山茶花(さざんか)と呼んだりするのよ。」

 「そう…。」僕はそれ以上、話すことがなく、遠慮がちに彼女の顔に目をやった。化粧っ気はまったくなかったが、澄んだ綺麗な(ひとみ)だった。美人とまではいえないが、丸顔(まるがお)でとても可愛かった。赤い唇は薄く開いて、確かに山茶花の花びらのように可愛い。お母さん似だろうなと思った。

 「遅くなったから、もう帰らなくちゃ。」と僕は言った。

 突然、彼女は尋ねた。

 「あなたがたの玄関の水樽、いつも空っぽね。なぜ、自分たちで水を汲まないの。」

 「人民のために奉仕する雷鋒さんは、僕らの中にはいないよ。せっかくバケツいっぱい運んできても、柄杓(ひしゃく)いっぱいも使わないうちに[14]、ほとんど他の人に使われてしまう。何のために苦労して水を汲むのか分からない。それに、井戸から距離もあるし、慣れていないから、着くまでに半分以上はこぼれてしまうんだ。だめだめ、馬鹿らしいだけだよ。」

 「じゃ、私が汲んであげるわ。」彼女は立ち上がり、天秤棒(てんびんぼう)で水を運ぶ格好をしてみせた。その姿はとても女らしくて魅力的だった。

 「私は慣れてるから上手なのよ。一滴もこぼさないわ。」彼女は断られるのを心配しているようで、そう付け加えた。

 「それはうれしいな。」僕は彼女の話を本気にし[15]てはいなかった。「そうしてもらえるとみんな喜ぶよ。」と話を合わせた。

 「みんなのことなんか関係ないわ。」彼女は口をへの字に曲げて[16]言った。

 「どういうこと?」

 「当ててみて。」彼女はちらっと見た。

 そんなことはどうでもよかった。僕は「…もう遅いから。帰らなくっちゃ。」と言うとすぐに彼女の部屋を出た。黄隊長は暗闇の中に座り、口と鼻を水キセルの大きな竹の(つつ)に押し当てて、ゴロゴロと音を立てながら一生懸命に水タバコを吸っていた。僕は軽く会釈をして玄関を出た。

 

问题与思考:

 

以下の質問に日本語で答えなさい。

1、黄隊長の娘さんはどのような少女ですか、箇条書きにまとめなさい。

2.少女の部屋で、二人はどのような話をしましたか。

 

答え&ヒント

1.少女の年齢、容貌、性格、普通の女の子と違うところなどについて本文の内容を理解しながら整理しなさい。

2.男性と女性の言葉の表現に気をつけながら二人の会話を練習しなさい。特に少女の話がどういう意味なのか、理解しなさい。

 

 



[1] 「どうにかして」想个办法。どうにかして、彼女とデートできないものか。总得想点法子和她约会呀。

[2] 「なり」(接续助词)……就立刻;马上就……彼は簡単な挨拶をするなり、すぐさま本件について話しだした。他只是简单的寒暄了一下,就立刻直奔主题了。

[3] 「だらけ」(接尾词。前接体言,表示)满;净;全。彼は喧嘩をしたのか、傷だらけで戻ってきた。他和人打架了?怎么浑身是伤的回来了?

[4] 「らしい」(名词+らしい+名词,表示充分具有前面那个名词的性质)像……一样;称得上……◇男らしい態度をとる。有男子汉大丈夫的气概

 

[5] 「見向き」理睬。誰からも見向きされず、寂しい生活を送る。过着没人眷顾的寂寞生活。

[6] 「名詞+はもちろん」不用说……そんなことなら、僕はもちろん、子供にだってできるさ。么简单的事,别说我了,连小孩子都会。

[7] 「なり」(前接名词或者形容词,表示其相应的状态)与……相适、那样、那般。◇スピーチ原稿を自分なりに書いてみたのですが、おかしなところがあったら直していただけませんか。讲演稿我是按照自己的想法写的。不对之处请给予修正。

[8] 「愛想笑い」讨好的笑容。◇いつも愛想笑いを振りまいてばかりいるので、彼女の本心はさっぱり分からない。她一天到晚总堆出一付笑脸,根本无法看透她的心。

[9] 「それなり」恰如其分;相应的。お礼にはそれなりの物を準備してある。准备了相应的回礼。

[10] 「~て欲しい」(表示希望对方做某事)希望某人做……ぜひ君に歌って欲しい歌があるんだけど。有一首歌,很想让你来唱。

[11] 「全くといっていいほど」完全(下接否定)。◇料理は全くといっていいほどできません。我压根儿就不会炒菜。

[12] 「…たほうがいい」(用于建议对方如何做)……做比较好。無理に続けるよりも、諦めたほうがいい時もある。与其勉强的坚持下去,有时还是放弃的比较好。

[13] 「物心がつく」孩子开始懂事。◇彼女は物心がついたころからバイオリンを習い始めました。她从懂事起开始学习小提琴。

[14] 「…ないうちに」没……的时候;没……的情况下。あまりに退屈な話で、五分としないうちに眠ってしまった。话题太无聊了,没过5分钟就睡着了。

[15] 「本気にする」当真。◇夕刊紙の記事なんかいちいち本気にするな。時間の無駄だよ别把晚报的报道一一当真。完全是浪费时间而已。

[16] 「口をへの字に曲げる」撇嘴。◇僕の言ったことが気に入らなかったらしく、口をへの字に曲げて黙り込んでしまった。他似乎对我说的事不满意,撇着嘴不再说话了。