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天にむかって歌う 八
作者:赵平 发表时间:2013-09-03 浏览:2694

作品录音 (请点击):赵平教授文集

 

 白小鳳が許滔に別れを()げたのは、それから一週間後のことだった。

 僕はずっと、白小鳳が許滔と別れるのを願いに願っていた[1]。そうでなければ、白小鳳の心に僕の入る余地(よち)がない[2]と思っていた。しかし、許滔の口からそのニュースを聞いたとき、手放(てばな)しで[3]は喜べなかった。

 「どうして別れるんだ。」

 「彼女が言うにはさ、僕が彼女と恋に落ちてから、出世への努力も勉強もしなくなってしまったから、だとさ。」

 「そうかな…。」

 「それは事実だと思う。」

 「だったら、お前がまじめに努力して勉強をすれば、彼女はまたお前のところに戻って来るさ。」

 「ああ、戻ってくると彼女は、はっきり言った。猶予(ゆうよ)の期間は一年。」

 「じゃ、どうするんだ。」

 「貴陽に帰ったら日本語を勉強するつもりだ。親父の専門だから、教えてもらえる[4]だろう。」

 「どうして、日本語なんか[5]。」

 「今のところ、誰もが敬遠(けいえん)する言葉だろう。だから、日本語ができるようになる[6]と、貴陽では僕ただ一人だ。誰も僕に対抗できる者はいないじゃないか。たとえ今は使えなくても、必ずいつか使えると思うよ。」

 「それなら気をつけてやらないとね。用心に越したことはない[7]よ。今、外国語を勉強するのは、容易なことじゃない。人にしっぽをつかまれたら[8]、後々、厄介なことになる。」

 「先のことは天のみぞ知るだ[9]。問題は、今、僕がどうすればよいかということだ[10]。一年間は会いに来てはいけない[11]と言われたんだ。」

 「そっか。それなら僕がお前の代わりに会ってあげるよ。」

 「笑えない冗談を言うなよ。僕の気持ちも考えてくれ。」

 その日から、許滔は暇があると新華字典を手にして[12]、まるで和尚(おしょう)がお(きょう)(とな)えるようにブツブツと読んでいた。彼は新華字典の中の読めない字と使えない言葉を、すべて暗記(あんき)するつもりだった。毎日、白小鳳のところへ行く必要もなくなったので、アヒルとガチョウを連れて散歩する時間が増えた。時には僕も一緒に字典を覚えたりすることもあった。そんな時間が増えるとともに、彼との友情は、いっそう深いものになっていた。

 冬が訪れアヒルとガチョウは完全な大人に成長した。そればかりでなく[13]、アヒルは卵を産み始めた。これは意外な収穫であり、またとない[14]ご馳走になった。僕と許滔と二人だけのご馳走であるゆで卵は、周りのみんなに、とてもうらやましがられた[15]。謝楽康などは指をくわえ[16]、よだれを流していたこともあった。

 アヒルとガチョウの「水難事件」から、僕らは安全に池に出入りできる通路を造った。その通路を通ってアヒルとガチョウは毎日のように池に入り、浮草やタニシなどを捕食した。タニシのようなイキのいい餌を食べることで、羽は油を塗ったようにつやつやと光っていた。特にガチョウのマリは、丸まると太り、歩く姿にも威厳らしきものが(そな)わった。冬が来るまでに[17]、アヒルとガチョウの食料は山ほど[18]蓄えてあった。(たくわ)えるといっても[19]名実相(めいじつあい)(ともな)[20]良い例だった。「ついでにヒツジを引いていく(事のついでに他人の物を持ち去るたとえ)」だった。畑へ行けば、僕と許滔は必ずほぐしたトウモロコシを鞄に入れて持ち帰り、ベッドの下の空間に隠しておいた。貴州は冬になって霜が降りるせいか、かえって柔らかい草が生えてくる。たとえトウモロコシをやらなくても、天然の餌で腹半分ぐらいは満たされるのだった。

 許滔が白小鳳の気持ちをつなぎ止めるために、一生懸命に勉強しているとき、こんどは謝楽康が時々行方不明になるのが僕は気になっていた[21]。許滔を含め、他の人はこのことに全く気がついていなかったが、僕はある疑念を抱いた。そこで、ある日、謝楽康が夕食の後、水蛇のようにスーと暗闇の中へ消えていったとき、僕は黄隊長のところへ行ってくると理由をつけ、夜の闇の援護を借りて、少女たちの泊まっている村へ赴いた。

 村に近づくと、僕は抜き足差し足[22]で竹林に入った。そこで、自分の第六感がずばぬけていることを確認した。案の定[23]、竹林に二人の人影があった。その輪郭を見ると、間違いなく白小鳳と謝楽康だった。謝楽康は、その時代に流行っていた軍隊用のオーバーを肩に掛け、白小鳳を胸に抱いていた。二人は、唇を重ね、身体を寄せ合っていた。僕は岩陰(いわかげ)から頭を出して(のぞ)いた。僕の体温は急激に冷えきった岩に吸い取られていき、心までが(こご)え氷のように冷たくなった。しかし、僕はじっと動かなかった。

 時間がどれぐらい経ったか。冬の暗闇の中でじっと立っている二人と、ヤモリのように岩の陰に這ってじっとしている僕、そんなシーンは誰から見ても滑稽(こっけい)だろう。しかし、そのシーンを構成(こうせい)する三人は、真剣そのものだった。しばらくしてようやく謝楽康は頭を動かした。首が疲れたのだろうか。頭の動きに唇は追いつかなかった。その弾みで空気を急に吸い込んで、ラーメンをズルッと吸い込んだような音が、竹林の中に響いた。二人もその音が余りにも[24]おかしいと感じたようで、声を合わせてウフフッと笑い出した。

 「ごめん、ごめん、僕が悪かった。」謝楽康は笑いながら謝った。

 「あなたったら力の入れすぎよ。唇が(しび)れちゃった[25]わ。」白小鳳がちょっと(うら)めしげに愚痴(ぐち)をこぼした[26]

 「今度からきっと気をつけるよ。」

 「いっつもそう言うけど、まるで飢えたオオカミのよう。」白小鳳は言い募った。

 「それは君が余りにも魅力的だから、ついつい[27]自制できなくなってしまうんだよ。」

 「今はそう言っているけれど、貴陽に帰るとすぐ私のことを忘れてしまうんでしょう。」

 「そんなこと絶対ないよ。嘘をついたら鼻が長くなる。君のことを前からずっと好きだった。僕の愛は昔から永久不変のものだ。」

 「昔からってどういう意味?私と付き合って間もないのに。」

 「言葉のあや[28]だよ。一字一句(いちじいっく)分析していけば、誰だってぼろが出る[29]じゃないか。とにかく、言いたいことは、二人の愛は、いま芽生えたばかりだけど、無限の生命力があり、必ず白髪(しらが)の生えるまで続くよ。僕の愛の(ちか)いは、盤石(ばんじゃく)(ごと)[30]堅いものだ。信じてよ。」

 「その誓い、信じていいの?」

 「もちろんさ。いま親父は君のお父さんと戦友になり、ともに戦っている。だから、僕と君とは、血を分けた革命の子孫のようなものだろう。僕らの愛が永遠に続く(あかし)のようなものじゃないか。」

 あいつは、こんな歯の浮く[31]ような口説(くど)き文句をいつ覚えたんだろう。まったく僕は石を投げ付けてやろうかとさえ思った。もうこれ以上あいつの甘い言葉は聞きたくない。だが帰ろうとすると、体が思うように動かない。長時間、同じ姿勢でじっとしていたので、全身が痺れて手も足も硬直(こうちょく)してしまっていた。僕は歯を食いしばり[32]、音を立てないように後ずさった。

 夜空の下、田舎道は霜が降ったように白く見えた。僕はしびれた足を引きずりながら、小走りに走った[33]。言葉に表せない[34]感情で胸がいっぱいだった[35]。ずっと好きだった白小鳳のつぶらな瞳と、白小鳳のために必死に新華字典を()めている許滔、両親や兄弟のことまでもが頭に浮かんだ。風が吹いてきて、僕は大きなくしゃみを二つした。弾みに、鼻水と涙がいっせいに吹き出し、そのまま泣き出した。歩きながら泣きじゃくる声は、自分でも聞き(ぐる)しく感じた。

 村に着くと、不思議にほっとした。倉庫に入ると、みんなはすでに眠っていた。許滔は一人、菜種油の灯火の下で字典を読んでいた。僕はスッと近づいて、パシャッと字典を叩き落とした。

 「何だよ、いきなり。」彼はびっくりして、僕を見た。

 「何があったんだ?」

 「無駄なあがきはもう止めろ。」僕はちょっと口ごもった。そして彼の戸惑(とまど)った表情を見て、

 「貴陽に帰ったら一緒に日本語を勉強しよう。絶対できるようになるまで頑張るんだ。」

とだけ言った。

 

问题与思考:

 

以下の質問に日本語で答えなさい。

1.白小鳳が許滔と別れた理由は何ですか。また、本当の原因は何でしょうか。

2.白小鳳と別れたあと、許滔はどう変わりましたか。

3.白小鳳はなぜ謝楽康とデートするようになったのですか。

 

答え&ヒント

1.質問1と質問3については、ただ若者たちの恋と愛情の問題だけではなく、当時の時代背景とも繋がっています。それを踏まえてこの三角関係の恋を理解しましょう。

2.許滔の勉強振りをまとめなさい。

3.当時謝楽康の父親は白小鳳の父親及び家族の運命を支配する権力者でした。そこで、白小鳳は父と家族のために、好きではない謝楽康とデートするようになりました。

 

 




[1] 「願いに願う」愿望实现。願いに願っていたことが実現した。如愿以偿。

[2] 「余地がない」没有……余地。彼の犯行に関して、もはや疑う余地がない。关于他的罪行,已经是毋庸置疑的了。

[3] 「手放しで」无条件地;无拘束地;毫无顾忌。◇ともかくも戦乱は治まったが、手放しで喜ぶわけにはいかない。尽管平定了战乱,但还是不能高枕无忧啊。

[4] 「てもらえる」てもらう的可能形)可以请某人做某事。君の子供の頃の話をしてもらえないかい。能讲讲你小时候的事情吗。

[5] 「なんか」之类;等等;什么的(同时表示一种轻蔑、谦虚或意外的心情)。彼のことなんか、もうどっちでもいい。他的事情,就随他去了。

[6] 「~ようになる」(接动词原形,表示从不可能到可能的状态,或从不能实行的状态变化到能实行的状态)变的……;逐渐会……;就能……練習の甲斐があって、なんとかうまくできるようになった。练习没有白费,总算能顺利通过了。

[7] 「~に越したことはない」再好不过。◇君のことだからミスはないと思うが、やはり確認するに越したことはない。你做的事应该不会出错,不过还是确认一下为好。

[8] 「しっぽをつかむ」揪住尾巴;抓住漏洞。◇ついにあの巧妙な詐欺グループの尻尾をつかんだ。总算抓住了那个诈骗团的狐狸尾巴。

[9] 「天のみぞ知る」只有天知道。◇できる限りの準備はした。勝負の行方は天のみぞ知る、だ尽最大的努力进行了准备,成不成功只有天知道。

[10] 「…ということだ」(就某一情况加以解释的表达方式)……就是说。彼女が言うように、大切なのは過去ではなく今ということだ。正如她所说的,重要的不是过去而是现在。

[11] 「…てはいけない」不能……做。知らない人に、ついて行ってはいけないよ。不能跟陌生人走。

[12] 「~を手にする」拿在手里。かけがえのないチャンスを手にする。获得了宝贵的机会。

[13] 「~ばかりでなく」不光……;不仅……而且。自分の好きなものばかりでなく、他のものも食べなさい。不要光吃自己喜欢的,其他的东西也要吃。

[14] 「またとない」不可多得的。◇執筆予定者の急病で、その新人作家はまたとないチャンスを得た。因为参与执笔的人突然生病,给了那个年轻作家不可多得的机会。

[15] 「うらやましがられる」がられるがる的自发态)不由得羡慕。◇宝くじに当選し、友達からうらやましがられた。因为中了彩票,朋友们都羡慕的不得了。

[16] 「指をくわえる」垂涎。◇ずっと探していた「幻の酒」だったが、あいにく持ち合わせがなく、ほかの客に買われていくのを指をくわえて見ているしかなかった。找了很久才找到的“梦幻之酒”,却因为没有带钱,只能眼巴巴地望着别的客人将它买走。

[17] 「~までに」(表示动作的期限或截止日期。不能后接存续体。)在……之前、到……为止。日が暮れるまでには帰ってくるよ。日落之前要回来哟。

[18] 「山ほど」很多。お前の代わりなんか山ほどいる。職場が気に入らないならさっさと辞めちまえ。/想干的人多如牛毛。你对单位不满意可以赶紧辞职呀!◇演説会場には人が山ほど詰め掛けていた。演说开场时人山人海蜂拥而至。

[19] 「~といっても」虽说。魚といってもたくさんの種類がある。虽说是鱼,也有很多种类。

[20] 「名実相伴う」名实相符。◇彼の門下から優秀な人材が陸続と出ている。名実相伴う日本一の学者だ。名实相符,他是日本的顶尖学者,弟子优秀,人才辈出。

[21] 「気になる」担心;放在心上。昨日の失敗がずっと気になっている。昨天失败的阴影一直挥之不去。

[22] 「抜き足差し足」轻手轻脚、蹑手蹑脚。抜き足差し足でそっと忍びこむ。蹑手蹑脚悄悄溜进去。

[23] 「案の定」如预期的那样。◇見るからに雑な仕事ぶりだったが、案の定次々とミスが発覚した。看他的工作态度就很随便,果然漏洞一个接一个。

[24] 「余りにも」(一般多与形容词连用。有时也和动词连用。表示该形容词或动词所表示事物的程度超出一般常识。多带有指责等贬义。常后续すぎる)太……、总是……余りにも暑くて、外出する気にならない。天气太热了,没心思外出。

[25] 「~ちゃった」(是てしまった的口语形式,表示事情的结果)……了。あら、この子いつの間にか眠っちゃったわ。诶呀,这孩子不知什么时候睡着了。

[26] 「愚痴をこぼす」抱怨。◇彼はいつも仕事の愚痴をこぼしてばかりいる。他对工作总是满腹牢骚的

[27] 「ついつい」つい的强调形式)不知不觉;不禁。目の前にお菓子があると、ついつい手を伸ばしてしまう。看到了眼前的点心,不自觉地就伸手去拿了。

[28] 「言葉のあや」语言上的技巧;搬弄言辞;巧妙地措辞。◇「枯れ木も山の賑わい」と言ったのはほんの言葉のあやですから、気にしないでください。说“聊胜于无”,这只是语言的措辞问题,你别在意呀。

[29] 「ぼろが出る」露马脚。◇嘘が下手で、いつもすぐぼろが出る。撒谎都撒不圆,总是漏洞百出。

[30] 「~の如く」如;和……一样。彼は烈火の如く怒っていた。他怒发冲冠。

[31] 「歯浮く」=「歯が浮く」牙倒;肉麻。◇よくもあんな歯の浮くようなお世辞が言えたもんだ。居然能说那么肉麻的奉承话。

[32] 「歯を食いしばる」咬紧牙关。◇歯を食いしばって黙々と働いた。咬紧牙关,默默地干活。

[33] 小走りに一路小跑。◇のんびりしていたら遅れると思って、時計を見ながら小走りに急いだ。快点儿走,肯定会迟到,想到此,我一边看表一边小跑了起来

[34] 「言葉に表せない」无以言表。この喜びは言葉に表せない。这种喜悦无以言表。

[35] 「胸がいっぱいだ」充满心胸;满怀。◇感謝の気持ちで胸がいっぱいだ。不尽。